食品加工残さ飼料の給与による高品質鶏卵の開発
堀元司・樋田宣英
食品産業担当
Qualitative Improvement of Egg by Feeding Feed of By-products Derived from Food Industry
Motoshi HORI
・
Nobuhide HIDA
Food Industrial Gr.
要 旨
食品加工残さ由来飼料で−カロテン含有量の高い大麦若葉粕サイレージを採卵鶏に給与することによる高- カ
ロテン卵生産方法の検討を行った.
1 採卵成績における飼料摂取量,採卵率,卵重等では対照区と大麦若葉粕サイレージ添加区に差は見られず,HU
ではサイレージ添加区で増加する傾向を示すなど,サイレージ添加飼料の給与による鶏卵生産性への悪影響は認 められなかった.
2 大麦若葉粕サイレージ添加飼料の給与による卵黄中レチノール含量の変化は認められなかったものの,卵黄中
- カロテン含量は添加量の多い区ほど増加し 10. 0%区では 28 日間給与することで添加前の 3. 1 倍量まで増加した.
1.
はじめに
当センターでは食品加工残さを飼料として活用するた めの前提となる安全性や栄養成分等の調査や,サイレー ジ化技術を活用した保存性の向上方法の検討を行い,食 品加工残さ由来飼料の生産方法の確立を行ってきた.
今回は,食品加工残さ由来飼料の付加価値向上,需要 拡大とともに大分県産ブランドと成り得る畜産物の開発 を目的に,食品加工残さ飼料中の有効成分を活用した高
品質畜産物の開発について検討を行うこととし,- カロ
テンが豊富に含まれている「大麦若葉粕」の採卵鶏への
給与による高- カロテン卵生産について検討を行った.
2.
実験方法
( 1) 高品質畜産物生産技術の検討
採卵鶏に大麦若葉粕サイレージ添加飼料を給与して生
産した鶏卵中の- カロテン及びレチノール( ビタミン A)
含量の推移を調査した.
なお,本試験は畜産試験場との共同で実施しており,
畜産試験場で Tabl e 1 の生産条件により鶏卵を生産し,
当 セ ン タ ー で 卵 黄 中- カ ロ テ ン 及び レ チ ノ ー ル 含 量 の
調査を行った.卵黄中- カロテン及びレチノール含量の
調査は HPLC 法により行った.
Tabl e 1 鶏卵生産条件
供 試 鶏 ボリスブラウン H20. 10. 14 生( 1回目給与開始日 450 日齢) 4区× 4羽=16 羽
試験期間 1回目 H22. 1. 10∼22. 2. 7( うちサイレージ給与期間 H22. 1. 11∼22. 2. 7)
2回目 H22. 2. 22∼22. 3. 23( うちサイレージ給与期間 H22. 2. 23∼22. 3. 23)
飼養施設 開放鶏舎 1ケージ1羽ずつの単飼
基礎飼料 採卵鶏成鶏用飼料( CP18%,ME 2, 850kc al / kg) を給与し,全区とも飽食とする.
試験飼料 大麦若葉粕をビニール袋に封入,密封後,25℃で 2 週間保管しサイレージ化
試 験 区 対照区 基礎飼料のみ 2. 5%区 基礎飼料に試験飼料を 2. 5%添加
5. 0%区 〃 5. 0%添加 10. 0%区 〃 10. 0%添加
試験区採卵鶏番号
対照区 2. 5%区 5. 0%区 10. 0%区
1 回目 1∼ 4 5∼8 9∼12 13∼16
2 回目 13∼16 9∼12 5∼ 8 1∼ 4
( 注) 1回目と2回目の試験区は交差試験とした.
採 卵 日 試験開始日を 0 日として,- 1 日,14 日,28 日の 3 回
36
7.1
5.9
8.9
7.6
5.9
8.2
12.5
17.9
9.4
11.4
15.2
23.8
0 5 10 15 20 25
対 照 区 2.5% 区 5.0% 区 10% 区
− 1日
14日
28日
523
542
499
543 591
618
595 597
595 594 603
581
400 450 500 550 600 650
対 照 区 2.5% 区 5.0% 区 10% 区
− 1日
14日
28日
3.
実験結果及び考察
( 1) 高品質畜産物生産技術の検討
今回試験に用いた大麦若葉粕及び大麦若葉粕サイレー ジ 中 の- カ ロ テ ン 含 量 は 乾 物 中 で 176. 6mg/ kg , 62. 9mg/ kg であった.
1 回目の採卵成績においては,卵重,卵殻厚,卵殻強
度で対照区とサイレージ添加区に差は見られず,飼料摂
取量では 10. 0%区が多い傾向を示したがこれはサイレー
ジ添加分であり基礎飼料の摂取量に差は無く,採卵率で
は 5. 0%区で若干低下傾向を示したが,2. 5%,10. 0%区で
は若干増加傾向を示し,HU ではサイレージ添加区で増加
する傾向を示すなど,サイレージ添加飼料の給与による
鶏卵生産性への悪影響は認められなかった.( Tabl e 2( 畜
産試験場調) )
卵黄中- カロテン含量においては,対照区では試験期
間をとおしてさほど変化が無かったものの,サイレージ 添 加 区 で は 添 加 量 が 多 く 給 与 期 間 が 長 く な る ほ ど 増 加
し,28日間給与することで 2. 5%区で 1. 9倍,5. 0%区で
1. 7 倍,10. 0%区で 3. 1 倍量まで増加した.( Fi g. 1)
しかし,卵黄中レチノール含量には変化が認められな かったことから,卵黄中レチノール当量含量においても 変化は認められなかった.( Fi g. 2)
( レチノール当量(g)
=レチノール(g) +1/ 6 - カロテン(g) )
2 回目の採卵成績,卵黄中- カロテン含量,卵黄中レ
チ ノ ー ル 含 量 も 1 回 目 と 同 様 の 傾 向 を 示 し た . ( Tabl e 3( 畜産試験場調) ,Fi g. 3,Fi g. 4)
以上より,大麦若葉粕サイレージの給与により卵黄中 レチノール当量含量に対する効果までは認められなかっ
たものの,鶏卵の生産性に悪影響を与えることなく高
-カロテン卵の生産が可能であることが判明した. なお,サイレージを採卵鶏用飼料に混合する際には, サイレージ中の水分により飼料がだまになることがある ので注意する必要があった.
Tabl e 2 採卵成績(1 回目)
区分 飼料摂取量 ヘンディ採卵率 卵重 卵殻厚 卵殻強度 HU
( g/ 日) ( %) ( g) ( mm)
対 照 区 129. 4 84. 3 64. 98 0. 44 2. 86 79. 35
2. 5%区 130. 4 87. 4 64. 25 0. 42 3. 44 84. 58
5. 0%区 124. 4 81. 4 64. 18 0. 45 3. 69 87. 58
10. 0%区 143. 8 87. 6 64. 25 0. 46 2. 83 85. 93
μg
/
100g
Fi g. 1 卵黄中- カロテン含量の推移( 1 回目) F i g. 2 卵黄中レチノール含量の推移( 1 回目)
37
18.2
15. 2 15.0
12.3 18. 4 18. 8
17.1
23.7
15.0
20.4
18.6
23.3
0 5 1 0 1 5 2 0 2 5
対 照 区 2 .5% 区 5% 区 1 0% 区
− 1日
14日
28日
661
622
640
609 626
660
643
602 637
652
609
598
450 500 550 600 650 700
対照区 2.5%区 5%区 10%区
−1日
14日
28日
Tabl e 3 採卵成績(2 回目)
区分 飼料摂取量 ヘンディ採卵率 卵重 卵殻厚 卵殻強度 HU
( g/ 日) ( %) ( g) ( mm)
対 照 区 118. 4 85. 4 65. 08 0. 46 2. 95 88. 60
2. 5%区 120. 0 89. 3 62. 25 0. 43 2. 38 89. 80
5. 0%区 124. 7 91. 1 66. 38 0. 41 3. 81 86. 10
10. 0%区 128. 5 92. 5 64. 60 0. 43 2. 84 85. 32
Fi g. 3 卵黄中- カロテン含量の推移( 2 回目) Fi g. 4 卵黄中レチノール含量の推移( 2 回目)
4.
まとめ
食品加工残さ由来飼料である大麦若葉粕飼料の付加価 値向上,需要拡大とともに大分県産ブランドと成り得る 鶏卵の開発を目的に,大麦若葉粕サイレージの給与によ
る高- カロテン卵生産方法の検討を行った.
( 1) 採卵成績においては,飼料摂取量でサイレージの添
加分増加した区が見られたが,卵重,卵殻厚,卵殻強度
で差は見られず,採卵率,HU ではサイレージ添加により
若干増加傾向を示す区もあるなど,サイレージ添加飼料 の 給 与 に よ る 鶏 卵 生 産 性 へ の 悪 影 響 は 認 め ら れ な か っ た.
( 2) 卵黄中レチノール含量に変化は見られなかったもの
の,卵黄中- カロテン含量はサイレージ添加量が多く給
与期間が長くなるほど増加し,10. 0%区では 28 日間給与
することで添加前の 3. 1 倍量まで増加した.
以上より,大麦若葉粕サイレージの給与により鶏卵の 生 産 性 に 悪 影 響 を 与 え る こ と な く 高- カ ロ テ ン 卵 の 生 産が可能であることが確認できた.
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